石原・冨田対談!リスアニ! Vol.4「OPINION! 去年のアニソン 今年のアニソン」を読む。
お題
- ニコ動とアニソンの融合について。
- アニソンの王道・・・May'nとスフィアとアニメタイアップ。
- ライブ動員数より大切なことは、あると思う。 -fripSideが作る未来-
- アニソンとアイドル等他ジャンルとの融合だと?
- 融合するにしても、大事なのは方向。
- 総括
ニコ動とアニソンの融合について。
まずニコニコ動画の投稿者とアニソンが思いの外融合しなかった、という旨の石原Pの発言。これはその通りだし、僕はそうならなくてよかった、と思っています。ピコがメジャーデビュー後に自分の動画を削除した・・・というエピソードを例に挙げていますが、結局「大人の事情」という言葉を無視するのがニコ動の文化で、過剰なほどに大事にするのがプロの音楽業界ですよね。ニコ動からアーティストを発掘・・・ってのはフリーダムなアマの魅力をとっぱらっちゃうわけだから、現状はマイナスにしかならないでしょう。アニサマに出演したゴムだって、「おっくせんまん」を歌わなかったですし。
アニソンの王道・・・May'nとスフィアとアニメタイアップ。
「アニソンの王道とはどういうところにあるのか」という問い。結論を最初に書いてしまうと、王道というテーマからは完全にハズれてしまっている上に、言っていることも疑問。アニソンのメジャーを語るならアニメ作品とのタイアップ・・・それはそう。当たり前です。が、その後に続く言葉が、May'nやスフィアはタイアップがあるからしっかりライブ動員も持ってる、というお話。
シェリル・ノームでないMay'nのタイアップが彼女の人気に結びついていますか?オリコンの数字を見る限りでは、シェリルを除いたMay'nのシングルCDの売上はダウンし続けています。この点について、石原Pの認識は間違っています。彼女は2010年のタイアップで人気を増やしてはいません。あくまで2008年の『マクロスF』で獲得したファンがついてきているだけです。それはそれで凄いことですが、2010年を振り返るという意味ではMay'nのタイアップは不作。タイアップよりは、まだニコ生の『とりあえず生中(仮)木曜日』に毎週出演していたことの方が大きいのではないでしょうか。
スフィアは逆に上昇を続けていますが、彼女らの場合もタイアップの効果はさほど大きくありません。ClariSやfripSideほどのCD売上を獲得するには至らないでいるし、地道に膨大な声優業と、それに付随する雑誌のグラビアなどの仕事をこなしている結果が今の人気でしょう。寿美菜子の「視線ネタ」や「団地妻ネタ」なんかもその延長線上で人気に繋がっていると思います。もちろん一番大きかったのが『けいおん!!』に豊崎愛生と寿美菜子が出演していたことなのは言うまでもありません。2010年にタイアップした『いちばんうしろの大魔王』や『あそびにいくヨ!』、『おとめ妖怪ざくろ』はスフィアの売上にあまり影響を与えていないでしょう。
おそらく2011年、スフィアはもっと伸びますよ。本腰入れてお茶の間での認知に挑むはず。心配なのは彼女らと、そのファン層の若さ。その若さ故に勢いはありますが、冷めやすくもある(これはtwitterのTLを眺めてての実感)。少しでもオタクを軽く見るような発言をすれば瞬く間に広がり、ファン層の「拡大」ではなく「切替」になってしまう。
ただ、その点彼女らはすごくしっかりしているので、うまくこの若い時間を乗り切ってくれるんじゃないかと期待しています。活動の土台と、他のアイドルには無い価値が声優業であるということを、彼女らとミュージックレインの裏方さん達が忘れなければ・・・スフィアは声優アイドルであると同時に、アニソンユニットであって欲しいという、僕の個人的な願いですが。
ライブ動員数より大切なことは、あると思う。 -fripSideが作る未来-
一つ、誰でもいいからどうしても教えて欲しいことがあります。歌手にとって、ライブというのはCD以上に大事なものなんでしょうか?このインタビュー記事を読んで、一番「えっ」と感じたのが以下の石原Pの発言。
ジャンル全体が盛り上がってCDの売り上げも上がっているなかで、
「でもちょっとヤバいかも」と思ったのが2010年のアニソン界。
(〜中略〜)
CDが売れたfripSideやGirls Dead Monsterが、
ライブ動員においても驚異的な数字を叩き出したかというと、そうでもない。
ライブで大成功できなかったかもしれませんが、彼女らが歌ったアニメのDVD/BDは売れました。ライブで儲けられるのはアーティストですが、DVD/BDが売れなきゃアニメ業界自体がヤバいんじゃないんですか?そうなればアニソンも共倒れです。『超電磁砲』や『AngelBeats!』のヒットは、作品自体のネームバリューが最大要因でしょうが、彼女らの音楽をニコニコなり何なりで聴いて「この曲いいな、本編も見てみようか」って思った人間もいるでしょう。
根拠はありません。でも、劇中バンドのガルデモはともかく、fripSideのOP曲はアニメ本編に意識を向けさせる力を持ってますよね。fripSideの歌うアニメが売れればfripSideは安定してタイアップを獲得するようになり、新規ファンを獲得するチャンスをずっと持ち続ける・・・つまり、未来に大いに期待が持てるんじゃないですか?まぁ、曲作りが単調になって飽きられたら話は別ですが・・・
なお、ガルデモの一人・・・LiSAのライブパフォーマンスについては書きたいことは山ほどありますが、LiSAのソロデビューについては後日、別に記事を書く予定です。
アニソンとアイドル等他ジャンルとの融合だと?
アニメの数は決まっているから、活躍できるアーティスト数が限られる・・・というのも、当たり前だし、それでいいと思います。アニソンフェスの顔ぶれが似通ってしまっても、ライブでアニメが前面に出てくるようになれば新鮮さを保つことは容易です。アニメの新作は続々と放送されていきますからね。それよりも、曲が似通ってしまうことの方がよほど問題です。タイアップするアニメ及びその原作に似たようなもの・・・保守的な作品が多いことも問題ですが、それらを明確に識別できる曲作りができていなければ、どんな顔ぶれを並べようと退屈でしょう。(キャラソンなら、そんな心配をしなくてもいいんですけどね・・・)
いずれにせよ、「その問題を解決するために」アニソンとアイドルの融合なんてのは、賛同できません。僕は渡り廊下走り隊の曲は聴いていませんが、確かにAKB48が舞台でやる曲や、派生ユニットがリリースしている曲は、歌詞に非日常的なストーリーが埋めこまれているものが多く、インパクトの強い、派手な曲が多いんです。だからアニメと関係なくてもアニソンっぽくなる・・・というより、同じ方法論で作られている。「Next heaven」なんて架空のロボットアニメの主題歌というコンセプトの曲がありますが、まさにそれです。YouTubeとかからは消されちゃってますが、ノースリーブスのアルバムに収録されています。何はともあれ聴いてみてください。
でも、アニソンの作詞をする上で大切にして欲しいのは「他人が作った」アニメ本編への理解。そこがブレると、歌詞と曲とアニメとがリンクして感動できる可能性が低くなる。確かに、アニソンはまず「アニメの良き看板」であって欲しい。インパクトのある曲作りがすごく大事だと思うし、AKBのいくつかの曲はその条件をクリアしている。でも、アニソンの良さって、その奥にもあるじゃないですか。例えば5pbの社長さん、志倉千代丸はtwitterで「俺の音楽面での仕事。それは主題歌の歌詞でネタバレをする事」だと発言しています。それはアニメやゲームの作品を見ないと楽しめないネタ。でも見た後で聴けば、その曲はリスナーにとって、より大切なものになっていくんです。手法は人それぞれですが、大事なのは本編とのより密接な結びつきによって、リスナーの中で曲が進化できる余地を作ること。これができるのがアニメソングの醍醐味の一つなんです。看板であり、お土産であって欲しい。そんなテクニックを、業界外の人間が使ってくれるのか?と言えば、可能性が減ると思います。
・・・とは言え、それはクリエイターの話。アーティストの話になると、また別問題。アニメ作品単体への愛が微塵も感じられないアーティストが、平気で「アニメ文化」への愛を語っている現実。アニメやゲームのタイアップもロクに歌っていないアーティストが、過去の名曲をひっさげるでもなしに、平気でアニソン歌手面している現実。そんな現状がアニソンブームであり、石原Pが注目したアニソンブームは彼ら彼女らによって作られたもの。融合論を唱えるのも無理も無いと言えば無いんです。例えばしょこたんだったら、そこらのアニソン歌手より歌に魂込めてしまう。だから、作詞作曲は業界の人間に任せたいけど、歌い手は・・・となると、僕も正直「アイドルでもいい」ですね。アニメ視聴者に意識を持って歌える人であればいい。(だから僕はスフィアを応援しているのかもしれない)
融合するにしても、大事なのは方向
「これ俺やりたいもん。文句ある?」
ありません。第一の視聴者である自分が見たくてしょうがないものを実現するのは、プロデューサーとして、あるべき姿なんじゃないですか。少なくとも僕はあの紅白歌合戦でのハートキャッチプリキュアを見て、嬉しかった。あれは着ぐるみのプリキュアを登場させ、声優の水樹奈々が歌うという、上述のアニメソング固有の魅力を存分に発揮できる土台を作った上で、AKB48と組ませてアニソンに興味の無い層に堂々と披露したわけです。
ですが、アニソン好きで埋め尽くされるライブにFLOWやDOESを呼ぶ・・・そう盛り上がるとは思えません。アニサマ2008に参加した時、AAAの時とか、やっぱり休憩タイムな雰囲気はちょっと感じました。客は、目当てのアーティストが来るからライブに足を運ぶ。フェスであってもそうですよね。最初から興味が薄いアーティストは、オマケなんです。オマケのアーティストは、よほどのパフォーマンスを披露しない限りウケてもらえない。気楽に楽しむも何も、興味って持とうと思って持てるものじゃないですよね。
で、その感覚は紅白でプリキュアを歌う水樹奈々とAKB48を目の当たりにしたアニソンに興味がなかった人達も持っているんじゃないのかな、という気がしていて、心意気はいいと思うし、アニソン好きとしては嬉しいけど、そこは線引きした方がいいのでは?と思います。年末に、紅白の裏でデカいアニソンカウントダウンライブをやっちゃうとか・・・まぁそれこそ石原Pの仕事ではないし、ソロでカウントダウンをやるアーティストもいますし、非現実的かもしれませんが・・・
総括
ざっくり総括すると、アニソンの魅力を世に広げていくのはいい。でも、アニメ業界外の人を積極的にアニソンに招き寄せることは反対。アニメを軸に据えたライブにシフトすることができれば、アニソンライブは新鮮さを保てる。今度A-FESとACEが開催されますが、僕はこの二つは合体しちゃえばよかったのに、と思っています。番組単位での声優のトークショーに、アーティストの歌も加える。盛り上がると思いませんか?まぁ、ゲームソングの歌手やタイアップの無い「アニソン歌手」が出てこれなくなりますし、過去の名曲を聴く場にもなれませんが・・・多種多様なライブの一つのかたちとしてはアリじゃないでしょうか。
ちょっとまとまりの悪い感想になってしまいました。申し訳無い。あまりにもインタビューがライブありきの話に終始し、肝心のアニメとの絡みの話が一切なかったので、石原Pがライブ以外の面でアニソンをどう考えているのかが読み取れなかったのが残念です。石原Pの本分がブッキングにあるとしても、外部からの意見としてでもいいから、知りたかったな・・・というのが本音です。アニメ側と大きな温度差がある、ということはリスアニ! Vol.3 の方で語っていますが、その壁を崩す方向で頑張ってほしいな、というのが僕の願いです。