DAIMONZI-X

声優/アニソンレビュー&CDデータ語り  

DAIMONZI-Xアニソン年間大賞2021

2022年05月08日 11:39 更新                  
カテゴリ: [2020’s作品][アニソンレビュー]

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はじめに

 みなさんこんにちは、アニソン狂いでおなじみ大鋼 断です。これは2021年にリリースされたアニメやゲーム、特撮、メディアミックス作品の関連楽曲の中から、ベスト・アニソンを決めて勝手に表彰してしまおうという企画です。名付けて、DAIMONZI-Xアニソン年間大賞・・・!

目次

  1. ノミネート作品リスト
  2. 新人賞
  3. 優秀賞
  4. DAIMONZI-Xアニソン年間大賞
  5. あとがき

ノミネート作品リスト

 ひとまず、2021年にリリースされた楽曲の中から「良い」と思った楽曲をノミネート作品として33曲リストアップしました。

ノミネートの条件は以下のいずれかを満たす場合。
(3つ目の条件は、前年に2つ目をリストアップ漏れした自分への救済措置です・・・)
・2021年にリリースしたCDに初収録された楽曲
・2021年に動画またはデジタル配信で初めて世に出された楽曲
・2020年以前に動画またはデジタル配信されていたが、2021年にリリースされたCDに初収録された楽曲(ただし、他の年にノミネート済の場合は除外)

クリックで画像を原寸表示します。

新人賞

 2021年にアーティストデビューした人の中で、最も素晴らしかった人に贈る賞です。

高野麻里佳

 2月24日、シングル「夢みたい、でも夢じゃない」でアーティストデビュー。奇しくも『ウマ娘』のゲームと同日リリースなんですよね。長らくイヤホンズの人、という印象が強かったんじゃないかと思いますが、ウマ娘が大ヒットしたことで、ようやく声優として名前が知れ渡ったんじゃないでしょうか(当時やってたアニメ2期ではアメリカ遠征でほとんど出番ありませんでしたけど・・・)。

 デビューシングルは、びっくりするぐらいのブリブリ元気。声優に対してこんな表現を使うのも妙ですが、コテコテのアニメ声。個人的には、長らく『オルガル』の鬼束千穂の人として認識していましたし、サイレンススズカにしても、か細い声の印象が強かったので、余計に驚きました。その後、2ndシングルではブリブリ感は抑えて、声の柔らかさの活きた、格好良さのある音楽をやっています。

 ただ、新人賞に選出する決定打となったのは、1stシングルのc/w曲「さよなら星空」です。この曲が強く印象に残りました。曲自体のインパクトも強いですが、そこに乗る高野麻里佳の歌声の、楽器としての音色の素晴らしさ。歌声は高音と中低音でガラリと変わりますが、そこのギャップも楽しめますよね。

 長らくお世話になった『オルガル』がサービス終了したので、ついでに千穂のキャラソンも紹介しておきます。アニメやゲームでドSキャラってそんなに珍しくはないですが、ここまで振り切ってるとなると珍しい。

優秀賞

 贔屓目抜きに素晴らしかった楽曲たちと、贔屓せざるを得ないほどのめり込ませる楽曲たちに贈る賞です。今年は全13曲・・・!

LizNoir
The Last Chance
作詞・作曲・編曲:Q-MHz


 アニメ『IDOLY PRIDE』2nd EDとして使用された莉央&葵ver.、それからシングルCDでリリースされた4人verが存在しますが、両方素晴らしいので1枠で選出しました。

 知らない方のために説明しておくと、LizNoirのCVは戸松遥、高垣彩陽、寿美菜子、豊崎愛生・・・そう、スフィアです。何故2人verと4人verが存在しているかというと、ストーリー上でメンバー追加があったから。

 この曲が初めて世に出たのは2DアニメMVで、キャッツアイやらVOWやら何やら、全ての元ネタを解説できるほどの知識は無いけれども、とにかくやたら凝った80年代オマージュの作風で、4人が怪盗をやります。都会の夜の闇を颯爽と駆け抜けるようなサビのスピード感は素晴らしいけれど、2人verと4人verでは味わいが変わってきます。4人の方が強いかと言えば、決してそうではない。

 正直、長らく4人verは2人verに比べてイマイチだと感じていたんですよ。莉央と葵のLizNoirは、クールで、パワフルで、軽く百合を想起させる強固な世界観を形成しているのに、そこに愛とこころが加わるのは、嫌な言い方をすればノイズであり、蛇足です。それはきっと、作中のファンもそう思った人は多かったろうし、莉央自身も危惧したことだと思うんですよね。2人に思い入れが強いほど4人のLizNoirを受け入れることが難しい。特に、豊崎愛生が演じるこころの歌声は曲の雰囲気をガラリと変えてしまうレベルのもの。このMVを見ても、2番で登場する愛とこころはそれまでのクールな世界観を茶化してドタバタコメディに変えてしまう存在だから、なおのことです。

 そんな4人verを許せてしまった理由は、ゲームで何回も聴いているうちに、ふと気づいたことです。サビの「すべて乗り越えて たどり着くには」の「越」と「え」の間が短い。「こーえてーー」ではなく「こえてーー」と一気に突き抜ける。このサビの初期フレーズをサラリと歌い流してしまう。楽曲の最重要箇所の歌い方を変えてしまうことで、何とも疾走感が増幅しているんですよね。それは2人verになかった強みです。曲の印象の変化とは別に、曲のストロングポイントを更に強固にしている。これは凄いことです。

リリース当時の記事はこちら。
LizNoirのキャラクター性が生んだ傑作「Shock out, Dance!!」 他 2021/02/17頃発売のアニソンCD新譜

渕上舞
操り人形クーデター
作詞:渕上 舞
作曲:夜兎、藤井亮太
編曲:藤井亮太

 渕上舞6thシングルにして、アニメ『魔術士オーフェンはぐれ旅 キムラック編』ED。実は今回選出した楽曲の中で唯一のアニメ主題歌で、唯一の本人名義曲で、2曲しか選ばなかったソロ曲のうちの一つ。

 アニメソングらしいアニメソングですよね。歴史ある作品に相応しい楽曲。渕上舞の声は綺麗で柔らかいけれど、サビの出だしの力強さは素晴らしい。語気を強めるということに関する巧さは、やっぱり声優ですよね。

 あと、特筆しておきたいのは、この曲がアニメのED曲だということ!幸せですよね、オーフェンってアニメも。格好いい曲をEDに持ってくるアニメが必ずしも面白いとは限らないけれど、こういう曲とともに、多少の緊張感を持って話を終え、次回を待つ・・・たまらなく好みですし、バトルアニメはどんどんやって欲しい。もちろんバトルじゃなくても。

リリース当時の記事はこちら。
SG/AL同時リリースの渕上舞にハズレ無し。2021/01/27頃発売のアニソンCD新譜

TRINITY AiLE
Aile to Yell
作詞・作曲・編曲:kz

 『IDOLY PRIDE』より、TRINITY AiLEの代名詞と言える楽曲。ここでも念の為説明しておくと、TRINITY AiLEのCVは雨宮天、麻倉もも、夏川椎菜。ようするにTrySailです。LizNoirが闇属性とするなら、TRINITY AiLEは光属性。(とは言え、どちらも大胆不敵な印象が強いですが・・・)

 キャッチーですよね。イントロ・サビが超キャッチー。AメロBメロはとてもゆったりしていて、ふわふわ雲の上にいるようだけれど、Bメロの終わりとともに、広大な大空に力強く羽ばたいていく。この気持ちよさ!そして、爽やかですよね。楽曲もそうだし、3人の歌声にはくどさがない。力みもないけど、決して弱々しいわけでもない。このすっきり感も武器。

 ちなみに中の人達によるバーチャルライブ映像なんてのもあります。(歌は録音ですが)
ゲームより先に出た映像なので、実はこの曲の振り付けが初めて世に出た映像でもあるのですが、当時は「このこじんまりした振付!楽曲の広大さに全然ついてけてないじゃん!」って正直思ったんですよね。「なんでシェー!?」とも。格好良さよりかわいさ押しなのねって点でも意外だったし、まぁとにかく不満でした。今はこれはこれでいいよなって思いますけど。それにしても、この映像の麻倉もも、何でこんなにかわいいんでしょう。

リリース当時の記事はこちら。
TRINITY AiLEは「Aile to Yell」に相応しいアイドルとなれるか。2021/02/24頃発売のアニソンCD新譜

サニーピース
SUNNY PEACE HARMONY
作詞:acane_madder、北川勝利
作曲・編曲:北川勝利

 アニメ『IDOLY PRIDE』劇中歌。サニーピースのデビュー曲。この曲が初登場したのはアニメ6話のデビューライブですが、この辺の、ユニット分割というサプライズからデビュー曲初公開の流れを100%楽しむことができたのはリアルタイムでアニメを見ていた人たちの特権でしたね。その後に見始めても、大抵の場合はサニピ・月ストの存在は知った上で見ることになるでしょうし。

 大鋼の場合、アニメ作中で初公開の楽曲って、第一印象はイマイチなことが多いんですよ。後になって良さがわかってくることが多い。でも、この曲は最初から素晴らしかった。Bメロの歌謡曲的な展開のはじまりで、あの雫(CV.首藤志奈)が立派にソロパートを務め上げたのも感慨深いし、その後の川咲さくら(CV.菅野麻衣)と一ノ瀬怜(CV.結城萌子)の歌唱力のギャップもとてもいい。サビは超キャッチー。判りやすい北川勝利節。サニピー!サニピー!ここでも雫のソロパートが光りますよね。あのライブシーンを見て、一番幸せだったのは雫推しの人たちだったでしょうね。で、極めつけは歌唱後の息切れ!汗!逆光!このあまりに美しい演出はこのアニメのライブシーンの定番となっていきますが、やっぱり最初にやったサニピのインパクトが強かったです。曲の雰囲気とかは月ストの方が好みなはずなのに、「凄い」と感じたのはサニピでした。

リリース当時の記事はこちら。
サニピー!サニピー!茅野愛衣10thメモリアル、アネモネリア 他 2021/03/10頃発売のアニソンCD新譜

月のテンペスト
月下儚美
作詞:利根川貴之
作曲:利根川貴之、坂和也
編曲:坂和也 & Wicky.Recordings

 アニメ『IDOLY PRIDE』劇中歌。月のテンペストのデビュー曲。この曲も初登場したのはアニメ6話のデビューライブ。クールビューティな衣装が映える、ストリングスの効いた楽曲。上でサニピの方がインパクトが強い、とは書いたものの、好みで言えば断然月ストです。ちなみにCVを務めているのはミュージックレイン3期生の5人。

 サニーピースが、川咲さくらの歌唱力を軸に他の4人が脇を固めるスタイルなのに対し、月のテンペストは、突出した存在がいないけれどそれぞれが個性的な歌唱をします。とりわけ意外だったのが伊吹渚(CV.夏目ここな)。キャラとしてはクレイジーサイコレズ友だち思いの優しい娘だけど、歌唱はとてもクール。

 それから、特にアニメ版では早坂芽衣(CV.日向もか)の印象が強いです。アニメ版のライブシーンでは、Bメロの一番盛り上がるところでセンターに立つんですよね。そこで普段の元気な芽衣からは想像できない、悩ましい表情と振付。リーダーの琴乃ですら贔屓が無くほぼ平等にソロパートが割り振られている中で、ビジュアルで芽衣を主役に仕立ててきた。「芽衣が影の、いや、真のセンター」と思わせるものでした。でも、ゲーム版ではセンターに移動しなくて、あくまで一番おいしいのは琴乃なんですよね。

リリース当時の記事はこちら。
月のテンペスト「月下儚美」の芽衣ソロいいよね。2021/03/17頃発売のアニソンCD新譜

高柳知葉, 大橋彩香, 大坪由佳, 髙橋ミナミ, 三澤紗千香, 田中あいみ, 前田佳織里, 佐伯伊織
本能スピード
作詞:うらん
作曲:濱田幹浩
編曲:AJURIKA

 スマホゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』より。アルバム「ウマ娘 プリティーダービー WINNING LIVE 01」に収録されているバージョン(上の動画は歌ってるの3人だけですが)。このバージョン、人数が多くてパート分けはほとんどわからないのが正直なところではありますが、ともあれデジタルな疾走感がただただ素晴らしい。基本的に、ユニット曲は人数が少ないほど個性を堪能できて良い・・・というのが大鋼の持論ですが、この曲は例外ですね。大勢が一気に歌うことで角が取れた合唱の中で、大事なところをソロに任せることでメリハリが生まれています。

 余談ですが、ウマ娘の中では、この曲でトップバッターを務めているキングヘイロー(CV.佐伯伊織)好きなんですよ。まぁ中の人がきっかけではありますが、本物の方のキングヘイローの生き様も、調べてみるとなかなかにドラマ性のある熱い競走馬人生?だったようで。緑のメンコとシャドーロールを再現した勝負服もいいよね。

リリース当時の記事はこちら。
月のテンペスト「月下儚美」の芽衣ソロいいよね。2021/03/17頃発売のアニソンCD新譜

IN-HI 16
1844より速く
作詞:pony
作曲:muscle剛
編曲:pony

 スマホゲーム『八月のシンデレラナイン』より、デジタルアルバム「灼けつくエール」に収録された曲。YouTubeに動画がないので、AppleMusicの試聴を貼っておきます。名義こそIN-HI 16(インハイ シックスティーン)ですが、我妻空(CV.相坂優歌)と桜田千代(CV.河瀬茉希)によるデュエット。空と千代のバッテリーソングとも言うべき曲。ちなみに1844というのはピッチャーマウンドからホームベースまでの距離18.44mが由来です。

 二人の相性の良さ。2人とも卓越した歌唱力の持ち主で、歌声はただただ美しい。あの1年生2人がこれを歌うところは想像できず、そういう意味で、キャタクターソングではなくあくまでIN-HI 16名義なのは納得です。まぁハチナイの楽曲って、ごく一部を除いて「キャラクターの声質で歌いはするけれど、あくまでキャストがキャラの匂いを残して歌うアイドルソング」ですよね。説明が難しいけれど、スタンスが明確でないが故の自由度を活かせているとは思います。

 大空のような広大感、打者に一球を投じる緊迫感、2人の距離感・・・楽曲だけでそれらを表現できているし、美しい2人の歌声も然り。アカペラでも楽しめるはずです。それらが重なることで生まれる世界観は圧巻。例年なら年間大賞に選んでも全然不思議ではありません。であるが故に、この曲が広く知られる状態にないことは残念ですね・・・(他のハチナイ曲にも言えることですが)

KOKORi
陽が沈んだ後のワタシー
作詞・作曲・編曲:amazuti

 スマホゲーム『八月のシンデレラナイン』より、ハチサマ5特典CD「灼けつくエール<先攻>」及び、ハチサマ5ライブBDを特典とした限定受注販売CD「HACHINAI BEST 2」に収録された曲。各配信サイトで配信されているデジタルアルバムには収録されておらず、2022年3月時点で入手方法は存在しませんが、YouTubeでリリックビデオが公開されており、フルサイズで聴くことができます。(そこまでするなら音源販売してくれればいいのにね・・・)

 KOKORiは逢坂ここ(CV.高木美佑)と椎名ゆかり(CV.船戸ゆり絵)のユニット。歌詞を読む限りは、ハチナイで屈指の闇深さを誇る椎名のイメージソングと言えるでしょう。

 夜と女子高生と疾走感の曲。80年代臭もありますよね。逢坂も椎名も、動画で使われているイラストみたいなコテコテのギャルではありませんが、歌声も歌唱力も女子高生らしくコントロールされていますよね。素人なりの全力感。多感な年頃感。本格派じゃないからこその魅力。キャラソンとしては、上の「1844~」とは全ての真逆。本格派じゃない、正統派。

おいしいものクラブ
おかわり☆タイムリー!
作詞:烏屋茶房
作曲:烏屋茶房, 篠崎あやと
編曲:篠崎あやと

おいおいおい、動画間違ってるぞ!と思った方、残念ながら意図的です。

 スマホゲーム『八月のシンデレラナイン』より、ハチサマ5特典CD「灼けつくエール<後攻>」に収録された曲。こちらは「陽が沈んだ後のワタシー」と違って公式動画も存在せず、長らくWeb上で聴く手段はありませんでした。まさに幻の一曲と言えます。

 一言で表現するなら、「お願いマッスル」のパロディですね。作った人が同じなので、セルフパロディというのがより適切でしょうか。メインヴォーカルが新田美奈子(CV.渡部優衣)で、セリフパートとサビの合唱を近藤咲(CV.山岡ゆり)と永井加奈子(CV.永野愛理)が務めるかたち。気の抜けるような新田の歌唱もいい。ハチナイ屈指のネタ要員である加奈子のセリフもいい。特に「穴あいてるからゼロカロリー!」は、らしいなぁ・・・と思いました。でも、個人的に一番の肝は、おいしいものクラブの良心である咲が2人に混じって・・・というか一番ノリノリで「ドーナツ!ベーグル!」とか「言うても大切!炭水化物!」とか言ってるところですね。

 おいしいものクラブの3人が好きな人にとってはたまらない曲なのは間違いないです。こんなにおいしい至高のキャラソンを世に広めようとしないのは愚策中の愚策だとハチナイ運営には強く言いたい。ハチサマのBDにしてもそう。全曲YouTubeで無料配信しろとは言いませんが、乗り遅れた者にお金を払って購入するチャンスすら与えないのは、いくらなんでも閉鎖的過ぎです。

 あと、この曲を聴いて初めて気づいたのですが、おいしいものクラブってセンターライン守ってるんですね・・・。ちゃんとストーリー上で理由付けされているとはいえ、加奈子がどう見ても適性外なセンターを守っているのは、3人にセンターラインをやらせるためだったんでしょうね。

 2022年5月時点で公式試聴不可の、エイプリルフールからゲーム内で開催されたダンベルコラボで、まさかのスタート画面に登場。ユーザーによるプレイ動画が投稿されたことで、とうとう日の目を浴びることに・・・。

シルビア=リヒター(CV:渕上舞)
カイゼルの花
作詞:土橋亜希
作曲:スズ
編曲:ZENTA

 スマホゲーム『オルタナティブガールズ2』キャラクターソング。サービス終了発表と時を同じくして公開された楽曲。今回の優秀賞の中で2曲しか選ばなかったソロ曲のうちの一つ。・・・はい、2曲とも渕上舞。彼女のことを特別贔屓に思っている訳ではなく、素直に楽曲と歌唱の良さで選びました。本人名義のアーティスト活動でも良曲が多いし、そういう引力を持っている人ですよね。

 オルガル2のキャラソンの中でも、かなり戦場の匂いが強い曲。格好良さでは「リフレイン・ウォーズ」と双璧。戦士としての生真面目さと、ドイツ人の少女としての純粋さがシルビアというキャラクターの大きな魅力で、この曲もそれが出ています。シルビアの独特のゆったりした柔らかい喋り方が大好きなのですが、この曲ではそれがない。ないけれども、渕上舞の歌いまわしはやっぱり柔らかい。ああ、シルビアだ、ってなりますよね。声優の表現力が出ている歌唱は、それだけで素晴らしい。

リリース当時の記事はこちら。
5年間続いたオルガルの終了で考える、スマホゲーの運営にハッピーエンドはあるのか? 他 2021/10/06頃発売のアニソンCD新譜

月のテンペスト
The One and Only
作詞:利根川貴之
作曲:利根川貴之、坂和也
編曲:坂和也 & Wicky.Recordings

 アニメ『IDOLY PRIDE』11話劇中歌。この曲、アニメ放送当時は嫌いだったんですよ。この曲だけじゃなくて、サニピも月ストも準決勝で歌った曲は嫌いでした。勝負の結果に対しての説得力に欠けていると感じたからです。ストーリー上、結果はそうしないと話が進まないにせよ、では対戦相手を贔屓にしている視聴者を如何に納得させてくれるのか・・・と思って見ていましたが、結果はガッカリでした。デビューライブは掛け値無しに素晴らしく、その後の快進撃に説得力を持たせるものでした。それに比べると、準決勝のライブはフツーのライブでした。ライブ前の成長エピソードを見ていない状態であれを見て感動できますか?というお話です。安易にライブを垂れ流しにせず、客席のキャラの表情、それからLizNoirの背中を映したのは良い演出ですが、でもそれだけではアウェーの視聴者をひっくり返せない。まして内輪の出来事など何も知らない客席のファンの贔屓心など到底ひっくり返せない。

 この曲を許すことができたのは、ゲーム版のライブ映像を見てから。映像がいいと、楽曲もいいと思えてくる。これなら仕方ない、と思えてくるんですよね。一番のキモは、サビの「唯一無二の光」のところでバシッとキマるポージング!5人をしっかり枠内に収めるカメラワークが素晴らしい。ここで視覚的なメリハリが生まれたことで、リスナーとしても自然と聴覚的メリハリを感じながら聴くことができるようになる。これならLizNoirと戦えます。

リリース当時の記事はこちら。
アイプラ莉央・琴乃の長瀬麻奈カバーに思う「背景」の大切さ。2021/12/22頃発売のアニソンCD新譜

一ノ瀬怜 × 早坂芽衣
ココロ Distance
作詞:利根川貴之
作曲:利根川貴之、坂和也
編曲:坂和也 & Wicky.Recordings

 ゲーム『IDOLY PRIDE』より。一ノ瀬怜と早坂芽衣のデュエット曲。作中では「MACARON DONUTS」というユニット名が明らかになっていましたが、CDのブックレット等ではこのユニット名は使われていません(でもロゴは明らかにマカロンとドーナツなんですよね・・・)。

 アイプラ初となる、ユニットの枠を超えて作られたデュエットであり、2022年5月時点で、アイプラ唯一のクールでデジタルなダンスミュージック。メンバーの個性を楽しむという観点では、ユニットの人数は少なければ少ない方がいい・・・という持論を持っている身としては、この曲が発表された時、物凄く嬉しかったことをよく覚えています。個性を堪能できる曲もこれから続々出てくるんだ、という期待感があったし、曲の雰囲気も好みでしたからね。

 以前Twitter上で牧野が流出した星見プロのアイドルスキルシートによれば、怜はダンス・体力こそ麻奈さえも凌駕するNo.1評価ですが、かたや歌唱力は唯一の△評価であり、ワースト。CVの結城萌子はアーティスト活動も経験している人ですが、怜として歌っている時はあえて出力を落としている感もあります。その結果のあどけなさは怜の大きな個性。

 デュエット曲ではありますが、実際のところメインの怜と、サポートする芽衣という構図ですよね。怜の苦悩の突破口を開く芽衣の見せ場はそんなに無いけれど、その献身性によって成立している曲。デジタルだけどウェットで、いい意味での青臭さ、人情味のある曲と言えるんじゃないでしょうか。もちろんダンスとセットで楽しみたい曲ですし、いつかライブで披露して欲しい。

リリース当時の記事はこちら。
アイプラ莉央・琴乃の長瀬麻奈カバーに思う「背景」の大切さ。2021/12/22頃発売のアニソンCD新譜

サニーピース / 長瀬琴乃
song for you
作詞:PA-NON
作曲:さかいゆう
編曲:さかいゆう

 アニメ『IDOLY PRIDE』より。

 神田沙也加演じる長瀬麻奈の歌として知られていたりもするかと思いますが、実際は作中で長瀬麻奈が披露することはなかった、披露できなかった幻の歌。アイプラの世界でのオリジナル音源はサニーピース版ということになるでしょう(もともと麻奈の曲だったことは公表されたのかなぁ)。

 サニーピース版・・・とは言っても、実質さくらソロと言って差し支えないですよね。さくらが麻奈の歌声と決別する、節目の歌。アニメでのこの曲のライブシーンは他の曲とは異なり、さくらのリハビリの回想が流れもしましたが、あの演出は素晴らしかったですね。

 最終回のエキシビジョンで歌われたのは琴乃によるカバー。これも良かった。正直、麻奈やさくらと比べると琴乃は歌唱力で少し劣るんだけれども、でも、そこに間違いなく魅力はあって。真剣勝負に最後まで負けなかった琴乃へのご褒美とも言えるかもしれません。少しもの哀しげな表情で素朴に歌い上げる琴乃の姿も良かったけれど、そんな琴乃の歌をバックに描かれる牧野の回想、再会、別れ・・・。琴乃の歌声はアニメのクライマックスを演出するに相応しいものだったと思います。あと、2番の後の間奏のストリングスソロ!こんなパートをバックにクライマックスをやれたアニメアイプラは幸せな作品だったと思います。

リリース当時の記事はこちら。
アイプラ莉央・琴乃の長瀬麻奈カバーに思う「背景」の大切さ。2021/12/22頃発売のアニソンCD新譜

DAIMONZI-Xアニソン年間大賞

大鋼が選んだ2021年No.1アニソンはお前だ!

LizNoir
Shock out, Dance!!
作詞・作曲・編曲:Q-MHz

 『IDOLY PRIDE』より、LizNoirの代名詞と言える楽曲。この曲を初めて聴いたのは2020年1月13日ですが、2021年にCD初収録となったので、このタイミングで満を持しての選出です。

 少し自分語りになりますが、どうしてLizNoirに心惹かれてしまうのだろう・・・と考えた時に、デビュー年からずっとスフィアを見てきた、けれどその音楽性は自分の趣味と少し離れたところにいた、そして声優としての4人の魅力に惹かれて注目をやめることができなかった・・・そこに颯爽と現れた、自分の趣味と合致するもう一つのスフィア。それがLizNoirだったんですね。それも、長年プレイしている『GF(仮)』を作っているQualiArtsが、『GF(仮)』と同じQP:flapper原案のキャラクターで世に出したとなれば、このユニットはまさに大鋼の2010年代を凝縮した理想の存在だったわけです。

 攻撃的。挑発的。アグレッシブという表現がよく似合う。けれどそういう曲は他にもある。この曲にどうしようもなく惹かれてしまう要因を考えるべく、少し分解してみましょう。

 イントロやAメロはもう第一印象をそのまま表現していますよね。「孤独」「堕落」「おかしくないなら笑わない」・・・刺々しさに満ちた歌詞がまくしたてられていく。Bメロはちょっと内向的。「自分の中の愚かさ」という刺激的な歌詞をこころに歌わせるのは、スフィアの「キミが太陽」で豊崎愛生が「仲間だけれどライバルだから」と歌っていたのを思い出しました。あの声でチクリと刺してくる曲は強い。サビ。必要最低限の言葉をじっくりと、滅茶苦茶キャッチーなメロディーで流し込んでくる。歌詞はちょっと意味深なんだけれど、モロに闇属性だったAメロ・Bメロとは裏腹に「心を闇から取り戻せ」なんですよね。ここで苦悩とダークヒーロー性・・・人間味も見えてくる。

 曲全体を通しての緩急、メリハリのある楽曲。しかも、サビが「緩」なのに、驚くほどキャッチーで格好いい。これはカラオケで歌っても、間違いなく気持ちいい。爽快感もありますよね。「The Last Chance」も大好きだけれど、この曲との決定的な違いは「緩緩急」という構成にある。即ち、サビはめっぽう素晴らしいけれども、それまでは焦らしの時間。極論サビだけでもいい。この曲は「急緩急緩」。最初から退屈させないし、ちゃんとクライマックスを最後に設定している。ずっと釘付けにさせてくれる。それは格好良さを超越した頼もしさであり、それはジャケットに見ることができる神崎莉央の背中が象徴しているように思います。

 余談ですが、2022年2月19日のアイプラ単独イベントで、この曲を生で聴くことができました。凄かったなぁ・・・鳥肌たちっぱなしでした。大鋼に推しはいない、無条件で称賛などしないというのがポリシーですが、あの時の大鋼が、長瀬麻奈のパフォーマンスを初めて見た時の神崎莉央と同じ顔をしていたことは認めざるを得ません。

リリース当時の記事はこちら。
LizNoirのキャラクター性が生んだ傑作「Shock out, Dance!!」 他 2021/02/17頃発売のアニソンCD新譜

あとがき

 『IDOLY PRIDE』一色の一年だったのは間違いありません。世間的には『ウマ娘』一色だった印象で、まぁ好感を持てるコンテンツだったのも確かですが、プロジェクトが公に出た頃からずっと見守ってきたアイプラがようやくアニメ配信、ゲームリリースまでこぎつけた。だからもちろん贔屓目は否定できませんが、しかし楽曲の良さ抜きで語れない作品であることもまた揺るぎありません。

 アイプラ以外も、優秀賞に選出したのはハチナイ、オルガル、ウマ娘・・・ほとんどスマホゲームの曲ばかり。唯一アニメソングから選出した渕上舞の「操り人形クーデター」が無ければ、この企画もアニソン大賞を名乗りづらくなるところでした(汗)ただ、それも単に大鋼がアニソンをロクに聴いていないというよりも、やはりアニメがキャラクターソングをやらなくなってきているという傾向は無視できません。昨年「非アイドルアニメのキャラソンに復権して欲しい」と書きましたが、残念ながらそうはなっていません。そんな中で良いと思えるアニメOP/EDがほとんど無かったというのが実際のところです。OP映像に映える、キャッチーなアニメソングにもっと出てきて欲しいですね。音楽の流行の移り変わりというのはもちろんあるんだけれど、アニメの看板の役割を果たせる、耳に残りやすい主題歌というのが王道アニメソングの条件だと思います(もちろんアニメ作品自体の魅力も重要だけれど・・・)。

   
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